世界史の出来事で言えば、1529年の第1次ウィーン包囲から1571年のレパントの海戦あたりになる。
人名で言えば、メディチ家、チェーザレ・ボルジア、マキアヴェッリ、ミケランジェロ、為政者で言えばスレイマン1世などで、これらの人物も登場する。
ヴェネツィアの貴族として生まれ、キャリアをスタートさせた若き日のマルコ。当時、イタリアという国はなく、ヴェネツィアが一つの共和国だった。
海運で隆盛を極めていたとは言え、ボリュームで大国スペインやオスマン・トルコにかなうはずもなく、大国の手のひらの上にある状態。
緻密なインテリジェンス活動に、国の命運を託さざるを得なかった。
まず、マルコは、密命を帯びてオスマン・トルコに派遣される。そこには、旧友アルヴィーゼが住んでいる。ヴェネツィアとオスマン・トルコの交易で財を成し、宮廷にも通じている、ヴェネツィアにとって貴重な存在。しかし、何を考えてるのかよくわからない不気味さをまとっている。
やがてアルヴィーゼは、世界史に残る大事件に没入する。裏切りとも言えるようなその行動に、マルコをはじめヴェネツィア人は困惑せずにはいられなかった。
マルコは同時に、ローマからヴェネツィアにやってきた遊女オリンピアといい仲になる。オリンピアは、マルコのキャリアとプライベートを、生涯にわたり時に激しく揺さぶる存在になっていく。
読みどころ。
- フィクションの中に歴史上の人物が多数、血の通った人間として登場する。英雄も、強い姿だけではなく欲に溺れる姿も。
- 小国が大国に翻弄され、その中でマルコは国だけではなく多くの人にも翻弄され、時に石につまずく。それでも悲観せず、謹慎生活もエンジョイしながらヴェネツィアに貢献して年齢を重ねていく、というマルコの姿を緩やかに楽しむ。
- マルコの周辺の謎めいた人物たち。特にマルコの一生を左右するオリンピアとの恋愛の行方。
塩野七生は有名なので今更こんな解説はいらないかも知れないが、イタリアに移住し、古代ローマ以来の西洋・イスラム史を題材とした歴史小説を数多く出している人。
小説だけではなく、歴史解説(「ローマ人の物語」など)も有名。
で、「小説イタリア・ルネサンス」は、ロックダウンで家にこもる中、描いたそうだ。
文庫で4冊なのでそれなりのボリュームである。電子書籍なら(好みはあるかも知れないが)合本版がおすすめ。
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