2025/05/23

【実話?】濱嘉之『警視庁情報官 ブラックドナー』:世界を股にかける暴力団の臓器売買ビジネスの闇

はじめに

警視庁公安部の敏腕情報官の黒田警視が、世界を股にかけた臓器売買ビジネスの闇に斬り込む。

あらすじ

久しく姿を見せず重病説が流れていた暴力団の組長を黒田警視がハワイで目撃するところから事件が始まる。
実は重病説は事実で、日本の聖十字病院を窓口にアメリカで肝臓移植を受け、新たなシノギに手を染めていたのだ。
今回も黒田たちが捜査を始めると出るわ出るわ、臓器売買の舞台がフィリピンをはじめとする海外に広がっており、関係者も宗教団体や政治家、そしてあろうことか警察内部にまで広がっていることが判明する。しかも彼らが臓器売買に手を染めたきっかけが面白い。

感想

今回の見物

  • 広域暴力団の組長をアメリカがタダで入国させるはずがなく、組長とアメリカ当局との間で繰り広げられる駆け引き。 

  • 体を壊してもタダでは起きない暴力団や政治家のしたたかさにもある意味で感心。

  • 海外を股にかける臓器売買を日本の法律で摘発することは難しく、どうやって強制捜査に持ち込むかも見物。現役の警察官でなければ知り得ない警察捜査の限界と可能性を広げようとする努力のせめぎ合いだ。

  • モデルは、重病説の組長はおそらく宅見勝、聖十字病院のモデルは聖路加病院だろう。

投げかけられる重いテーマ

今回スポットライトが当たる「臓器売買」というテーマに、現代社会の闇が凝縮されている。それは、権力者や富裕層の延命と、貧困層の生活苦を裏社会が取り持ち、臓器が商品として売買されている現実である。

広域暴力団の組長や、築地の「聖十字病院」の登場が、この問題の根深さを仄めかす。本書は、医療倫理・国家間の法的な壁、そして人間の尊厳という重いテーマを突きつけてくる。

    こんな人におすすめ

    派手なアクションや謎解きよりも、地道な情報収集や分析が中心。華やかさより、リアルな公安活動の息遣いを感じたい人、「警察のヒーローがかっこよく事件を解決する」という小説に飽きた人には最適。

    こんな方に特に勧めたい。
    • 警察小説の中でも、特に「公安」や「インテリジェンス」の世界に興味がある

    • 元警察官が書いた、リアリティのある物語を読みたい

    • すっきり解決しない物語に、逆にリアリティを感じる

    • 小説の登場人物・団体の実在のモデルが気になる

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