炎熱商人は彼が直木賞を受賞した出世作である。
約40年前にNHKでドラマ化され、ラストシーンがかすかに記憶に残っていた。
高度成長期の日本で木材需要が急増し、中堅商社がフィリピン、ルソン島のラワン材の新規取引に走る。
人格者の支店長、変わり者の次長、ぼんぼんの出向社員、イケメン現地社員、そして現地の人々が、心に残る戦争の傷、商習慣の違いに翻弄されながらも、徐々にフィリピン社会に根付いて商売を花開かせていく様子に感情移入してしまう。
イケメン現地社員は日比混血で占領下のマニラで日本人学校に通っていた設定。
随所に織り交ぜられる戦時中の回想、そしてなぜ彼が日本の商社で働く道を選んだのかも読ませるものがある。
しかし、世界経済の荒波には抗しきれず、現地の人々とトラブルが発生する。それがドラマで劇的に描かれたラストの伏線となる。
かつて、商社の採用面接で「炎熱商人を読んだことはあるか?」と聞かれたことがあるという。都市伝説かもしれない。
しかし、この小説を読めば都市伝説ではなく、本当にそんな質問があったのではないかと思わされてしまう。
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