2015/02/25

流星ワゴン(重松清)

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流星ワゴン (講談社文庫) [ 重松 清 ]
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今回はドラマでやっている小説を読んだ。ミーハーなもので。

妻の浮気(というよりセックス依存症)と離婚問題、息子の不登校と家庭内暴力、自分はリストラ、金を持ってる父親とは不和と、日本家庭の不幸を一人で背負い込んだような男が、ある晩死を意識する。その瞬間、事故死した親子の霊が運転するワゴンに誘われ、「一番大切な場所」と称して1年前にタイムトラベルするところから物語が始まる。

タイムトラベルしたからといって簡単に未来を変えられるわけではないが、心が離れた(と勝手に思っていた)家族の本当の気持ちを次第に理解し、生きる力を取り戻してゆく。

そして、霊の親子も好き好んで成仏もせずにワゴンを運転しているわけではなく、霊なりの事情があった。この辺は完全に「あなたの知らない世界」である。

少し閉口したのは、夫婦生活の描写がやたらねちっこいこと。テレクラ狂いを知りながら妻を抱く夫の、嫉妬と屈折が入り混じった半ば倒錯的な欲情がよく表現されていると思う。が、通勤電車では読まないほうがいい。

原作とドラマの違い探しも楽しみ(夫婦生活のシーンも含め、笑。日曜9時ではオールカットを余儀なくされるかもしれないが)。

カシオペアの丘で(重松清)


親子3人で平凡な暮らしをしていたサラリーマンが突然末期がんを宣告されたことをきっかけに、疎遠になっていた故郷、幼なじみのもとに戻り、かつて反発した祖父と対峙しながら人生の最後の日々を送る様を描く。 

 父と子の相克や、疎遠になった故郷や級友との向き合いは、この作者が繰り返し取り上げるテーマ。今回も、過去のもつれた糸がほどけたりそのまますれ違ったり。しかし、主人公なりに死への準備として心の中で決着をつけてゆく。

視点が変わるが、最初自覚症状のない末期がん患者がある日急変し、以後坂道を転げ落ちるように衰弱する描写が残酷なほど鮮明である。そして、死の床にあってもなお性欲は残るものの、力なく乳房に触れることしかできない姿に哀しさを誘われる。