公安調査庁が繰り広げる地味だが平和な社会を根底から支える国際諜報戦(まさに、「調査」!)を描いたインテリジェンス小説。
あらすじ
大学では漫研でひたすらペンでマンガを描き、安定した公務員を目指していた梶壮太。
なぜか公安調査庁に入庁し、神戸で外国の有害行為を追いかける部署に配属されてしまった。
あまりパッとせず、潜入調査をすれば公安にバレてつるし上げられる…、失敗続きで周りの誰もが次は左遷だと思われていたが、彼の上司は決して手放さなかった。
梶は地道に情報を集めて分析する能力に長け、北朝鮮のミサイル密輸を突き止める功績を挙げていた。また、カメラアイの持ち主であり、ジョギング中に日本の会社による有害行為の端緒をつかんでいた。なにより上司が買っていたのがその地味さだった。
KGB時代のプーチンがそうであったように、インテリジェンスの世界では、目立たないことは価値なのだ。
そして趣味のマンガもヒューミントに活かしながら、気がつけば神戸を舞台とする国際諜報戦の最前線に立っていた…。
感想
公安調査庁は、あくまで調査結果を報告書にして内閣に報告することが任務である。集めた情報の断片をどう分析し、どう構成し、意思決定者である官邸にどう伝えるかに全てがかかっている。
だから、尾行や、調査対象との接触や潜入はするが、決して力に訴えることはない。自ら摘発もしない。アクションの描写はほとんどない。そんな公安調査庁の活動の描写にリアリティを感じる。
NHKの記者という入口からインテリジェンス・コミュニティに入った手嶋龍一の、長年の取材の成果であろう。
また、手嶋龍一あるあるだが、舞台の一つにウクライナが選ばれている。
ウクライナという国が、いかに世界の謀略の要衝となっているか、現在の情勢を見るにつけ考えさせられる。
最後に、「鳴かずのカッコウ」とは何のことか?
梶が巻き込まれた諜報戦の調査レポートと彼のキャリアの行方は?
どんでん返しにも目が離せない。
こんな人にオススメ
- 『ウルトラ・ダラー』など、手嶋龍一のインテリジェンス小説が好き
- 派手なアクションよりも、静かで知的な心理戦や情報分析が好き
- 公安警察とは違う「公安調査庁」という組織の仕事に興味あり
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