これまで、「コンスタンティノープルの陥落」や「小説イタリア・ルネサンス」など、世界史に題材をとる小説を紹介してきた。
こういった歴史小説は,第一次ウィーン包囲・教皇インノケンティウス3世・クレタ島などなど、様々な歴史用語や地名が押し寄せてくる.もちろん、それぞれの本には簡単な地図などが付録にあるのだが、もっぱら電子ブックリーダー派なので、そうした付録はほぼ解読できないほど見づらい環境にある。
そこで、こうした背景知識をちょっと補強するために、高校の副教材の『世界史資料集』に目をつけた。
概要
高校の世界史の資料集は何種類かあるが、こちらの動画を参考に、帝国書院の「タペストリー」を選んだ。実際、書店で他の資料集と比べると、内容が豊富で、図解も丁寧な印象だった。
(この動画で解説している諸岡浩太郎さんは、長年予備校で世界史の教壇に立った非常に有名な講師で、2025年に早逝された。御冥福をお祈りしたい。)
B5版を横に広げた雑誌のような体裁で、300ページにわたり、類人猿時代から現代までの歴史的な地図・写真・グラフなど、フルカラーで豊富な資料が収められ、世界史を「見て楽しむ」ことができる。
アメリカの大統領一覧を見ると第2次トランプ政権まで収められており、情報鮮度は十分。
さらにところどころに挟まれているコラムも興味深い。
例えば、「アントニオ猪木が力道山と知己を得たのはどこか。なぜその場所だったのだろうか。」
感想
歴史小説やドラマのお供に最適
「コンスタンティノープルの陥落」を例に取ると、包囲戦当時のコンスタンティノープルの地図が、イラスト形式で載っている。
市内の主要な建物・城壁・オスマン軍の進路・そしてオスマン海軍の山越えのルートまでがわかりやすく一枚のイラストで示され、小説を視覚的にとらえることができる。これが非常に役に立つ。
高校生の学習用なので、小説に出てくるあらゆる事物が網羅されているわけではない。
しかし、読書の便を図るには十二分な情報であり、いつもの読書やドラマ鑑賞を何倍も立体的で面白くしてくれる。
歴史旅行のハブ
この『タペストリー』に目を通すと、地図や年表、文化的な背景、そして同時代の世界を視覚的に把握できる。
「この頃日本ではちょうど信長の時代だったのか」「この後革命の時代に入っていくのか」と、次々と興味が広がる。一つの歴史小説から、『タペストリー』を経由して、また別の歴史への旅路が続いている。
知らず知らずのうちに、単なる資料集ではなく、「歴史旅行のハブ」になっているのだ。
驚異的な高コスパ
最後に特筆すべきは価格。
これほどで充実した資料集が、なんと税込990円という安さである。
高校の副教材だから価格を抑えているのだろうが、大人が使う本としては極めてコスパが高い。
オススメの読み方
受験生や世界史がよほど好きな人は、最初から最後まで暗記するほど通読するのかもしれないが、ここは時間が限られる大人の一味違う読み方を考えてみる。
辞典として使う
まずは、読書して、ニュースを見てなど、ちょっとわからないことを辞書のように調べるときに便利。索引が充実しているので探しやすく、写真や図表が充実していてわかりやすい。このあたりはさすが高校教材である。
俯瞰的な「学び直し」
例えばシルクロードの周辺にはどんな国や王朝が栄えていたのか。太古から現在に至るまで、東南アジアではどんな王朝が興亡してきたのか。
こういった縦横に広がる話題を俯瞰的に追うには、文字を読むスタイルの本より、資料集が適している。
雑誌感覚で拾い読み
ヴェルサイユ宮殿のような歴史に残る壮麗な建物や、有名な絵画の写真も多く、見ていて飽きない。
雑誌を読むような感覚で(女性週刊誌と同じサイズである)、パッと開いて出てきたページを、おやつを食べながら一通り眺める。索引でこれだ、と思った言葉を引いて一通り見る。そんな暇つぶしにも最適だ。
豊富な写真の中から、次の旅行先が決まるかもしれない。
こんな人にオススメ
- 歴史小説や大河ドラマが好きで、その背景をもっと深く知りたい
- 世界史を学び直したいけれど、分厚い本を読むのは大変
- 国際ニュースに関心があり、その歴史的背景を理解したい

![最新世界史図説タペストリー 二十三訂版 [ 帝国書院編集部 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7470/9784807167470_1_9.jpg?_ex=128x128)


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