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夏目漱石

『道草』は漱石の実体験? 家庭不和を描いた夏目漱石の自伝的小説を読む

夏目漱石

外国留学から帰ってから大学に勤め、教育に、執筆に多忙な健三の日々を淡々と描いた作品。
漱石自身の軌跡とこの健三の設定が酷似しているので、漱石が自らの体験を書いたのではないかと見る向きがある。

あらすじ

外国留学から帰ってから大学に勤め、教育に、執筆に多忙な健三。妻とは喧嘩が絶えないばかりか、養父母が金をたかりに来て気が休まらない。養父母が二人がかりでたかるのではなく、養父と養母がそれぞれたかりに来るからたまらない。

そうこうしているうちに妻の出産が近づきますます忙しくなる。そんな健三の日々の生活と心の動きが微に入り細に描かれている。

2ページ程度に小分けにされた小節100個程度からなり、明らかに新聞小説を一冊にまとめた体裁である(事実、初出は朝日新聞への連載)。適当に分割されているので読みやすいと言えば読みやすい。

感想

漱石の作品の中でも特に私小説性を感じる一作である。

健三一家の家庭不和や親族間の金銭問題は、令和の現代でもなお普遍的な出来事であろう。
漱石は、その苦悩を新聞小説の形で吐き出しながらも、「文学」に仕上げ、家庭は支えであると同時に重荷でもあるというテーマを投げかける。

虞美人草』や『こころ』といった男と女のドロドロとは違う。『坊つちゃん』や『吾輩は猫である』といったドタバタ喜劇とも違う。類似作があるとすれば『彼岸過迄』かもしれない。

そうはいっても、妻はヒステリーだの娘は不細工だの産まれたばかりの下の娘が怪物みたいだのと新聞にぶちまけられ、反論の術がない家族はもっと大変だろう…。

こんな人にオススメ

  • 夏目漱石ファン、あるいは明治文学ファン
  • 自伝的小説や作家の実体験に基づく文学作品を読みたい
この記事を書いた人
Windcastor

小説・ビジネス書・エッセイなど幅広く読む読書ブロガー。
「本の扉を開く」では、話題の新刊や名著を中心に、読後に残る気づきや感想をわかりやすくまとめています。
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