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小説・文学近代文学

夏目漱石『彼岸過迄』:明治に描かれた人間のネットリ愛憎劇

夏目漱石

漱石の言い訳めいた能書きから始まる。

大病直後無理を避けて元旦まで執筆をやめていただの、1月から彼岸までに新聞連載を終わらせるつもりだから安直に彼岸過迄というタイトルにしただの。

どうなることかと思って読んだら、どっぷりと暗い方の漱石ワールドに引きずり込まれる一作。

あらすじ

大学は出たけどプー。誇大な冒険を妄想するばかりで就職活動も飽きて止めた山師的な敬太郎が周囲の人々の内面深くに立ち入ってゆく。

最初は駅員だがアウトドア派の森本の冒険談に魅せられながら、振り回される。明るい話はここまでで、この後はどんどん暗く深い人間の内面にはまって行く。

その後、就職活動のために友人須永の叔父を訪ねるところから、須永と、もう一人の叔父の松本、いとこの千代子たちの内面の傷やエゴに触れてゆくようになる。

感想

須永と千代子の間の陰にこもった恋慕・強烈な嫉妬・歩み寄れない誤解、そして背景にある須永の出生の事情の展開が、これでもかというほどネチネチネチネチと一分の隙もない緻密さに感心するやら呆れるやら。
そして、キレた千代子と須永の修羅場は、明治時代でもこんなことがあったんだと思うほど千代子がストレートである。

何人もの登場人物が語る物語が緩やかな関係を持ちながらオムニバス風に積み重ねられる形式で、昔の小説だと思って読んでいると、おっ、という意外な印象を受けた。

こんな人にオススメ

  • 『こころ』や『行人』など、夏目漱石の人間の内面を深く掘り下げる作品が好き
  • 単純なストーリーよりも、登場人物たちの複雑な心理戦や駆け引きを楽しみたい
  • 複数の視点から物語が構築される、実験的な小説が好き
この記事を書いた人
Windcastor

小説・ビジネス書・エッセイなど幅広く読む読書ブロガー。
「本の扉を開く」では、話題の新刊や名著を中心に、読後に残る気づきや感想をわかりやすくまとめています。
次に読む一冊を探すきっかけになれば幸いです。

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