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森鴎外

森鴎外『栗山大膳』:淡々とした文体が描く忠臣の悲劇~江戸時代のお家騒動「黒田騒動」

森鴎外

江戸時代前期、福岡藩黒田家で起きたお家騒動(黒田騒動)の起こりと顛末を取り上げた短編小説。黒田騒動は江戸時代の三大お家騒動(あと2つは伊達騒動・加賀騒動)の一つ。

あらすじ

江戸時代には黒田騒動を扱った歌舞伎がいくつも作られたというが、現代では栗山大膳、何それ、おいしいの?という反応も無理からぬところと思われるので、ネタバレにならない範囲で騒動のさわりだけを記しておきたい。

黒田長政は関ヶ原の戦いにおける軍功から幕府より福岡五十万石の所領を与えられ、家来の栗山利安と強い信頼関係で結ばれていた。

しかし、長政の息子忠之は素行に難があった。贅沢を好み、お気に入りの小姓倉八十太夫を取り立て、やがて十太夫一派が藩内で悪しき権勢を振るい始める。そこで栗山大膳(利安の息子)をはじめ忠臣たちが諫言すると忠之は彼らを遠ざける。

ついに大膳が忠之への伺候を取りやめ、緊張が最高潮に達したとき、大膳が捨て身の行動に出て、ここに幕府が介入するお家騒動に発展する。
ここまではよくありそうな話だが、経過と顛末は読んでみてのお楽しみ。

感想

事実を簡潔に淡々と記す短編というスタイルに鴎外の風合いを感じる。福岡藩士が籠城を計画する場面では、藩士の配置を一人ずつ実名で記録するかのような箇所があるのだが(ここは唯一しつこさを感じた)、筋書きは何箇所か史実と異なるらしい。

こんな人にオススメ

  • 歴史小説、特に「お家騒動」「忠臣」に興味あり
  • 森鴎外の「歴史其儘」ファン
  • 戯曲・歌舞伎やその原作のような文化的伝統に興味あり
  • 史実とフィクションの見比べを楽しみたい
この記事を書いた人
Windcastor

小説・ビジネス書・エッセイなど幅広く読む読書ブロガー。
「本の扉を開く」では、話題の新刊や名著を中心に、読後に残る気づきや感想をわかりやすくまとめています。
次に読む一冊を探すきっかけになれば幸いです。

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