casuisticaというのは、症例集とか、臨床報告という意味のようである。
主人公の花房が医学部を卒業する頃、開業していた父親の代診をしていた思い出を語る形で展開する。おおかた鴎外自身の駆け出しの思い出が背景にあるのだろう。
あらすじと感想
父親は最新の外国の医学書はあまり読まず(読む根気を失っている)、消毒の概念さえ理解していないのだが、患者の死期は正確に当てるなど花房に敵わないところがある。その中で花房は、父親はどんな患者であれ、目の前の患者を診ることに全精神を傾けている点が自分と違っているという気付きを得る。花房にしても父親にしても、それが許されるおおらかな時代だったんだなと。
その後、代診の頃の花房の症例集が3点。ネタバレは控えるが、顎が外れたが他所では治してくれないとか、息子が「一枚板」になったから往診してくれとか、他所で腹水がたまっている、ガンじゃないか、だから穿刺はできないと言われた患者が来たりとなかなかの活躍である。
こんな人にオススメ
- 森鴎外ファンや医師としての森鴎外に関心あり
 - 医学史や明治期の医療水準に興味あり
 - 医学生や医療従事者で、歴史的背景を知りたい
 
 
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