今回は、リーマン・ショックを舞台に日米ハゲタカが激突する。
リーマンショックをもたらしたアメリカ全体を覆う強欲(グリード)とその代償がテーマとなっている。
あらすじ
日本のハゲタカ鷲津は、前作「ハゲタカ3 レッドゾーン」のジェットコースターのようなアカマ争奪戦の最中に、なんと渡米していた。
そこでアメリカの住宅ローン債券のCDS1を買い漁り、次の買収の標的を、アメリカの心とも言える老舗製造業、その名もアメリカン・ドリーム社(AD)2に定め、工作を始める。
鷲津は、アメリカの住宅ローンバブルの崩壊と、世界経済の甚大な被害が間近と読み、アメリカを貪り喰う仕込みをしたのだった。
同じ頃、ADなどアメリカの優良企業株を多数保有し、市場の守り神と言われる投資家ストラスバーグも経済危機を予見し、警鐘を鳴らしていた。
しかし、市場原理主義のアメリカ政府と、危機を直視しない投資銀行の動きは鈍く、ついに投資銀行の破綻が始まる。「次」を巡り市場は疑心暗鬼に覆われ、サブプライムローンに傾斜していたゴールドバーグ・コールズ(GC)3も候補にされる。
以前から鷲津と微妙な関係だったストラスバーグだが、ADやGCを巡り鷲津と敵対関係になり、アメリカ政府をも巻き組む激闘が始まる。
感想
今回のストーリーを動かすのが「明」と「暗」だと思える。
「明」はハゲタカの周囲にいる真っ直ぐな若者たちだ。
まず、GCでストラスバーグを担当する平社員ジャッキー、GCの創業者の孫にして、ストラスバーグのパシリ役。
アランを失った鷲津の元には、リンが名家の御曹司アンソニーを連れてくる。アフリカ支援のNGOから来た純粋な好青年で、鷲津の鍛えたいという血が騒ぎ出す。
二人とも、ハゲタカ達の周りで右往左往し、時に鷲津やリンから劇薬を飲まされながら成長していく。
「暗」に位置するのは、ストラスバーグはもちろんだが、鷲津とは腐れ縁で元メガバンク頭取の飯島。アンソニーの伯父のニュージャージー州ケネディ知事あたりか。
彼らそれぞれの心の奥底に眠る暗部も、鷲津の買収工作を触媒に次第に表に曝け出される。
シリーズ全体がそうだが、緊迫感とリアリティに富んだ経済描写、投資ファンドの裏側や企業買収の戦略、国家とマネーの関係の巧みな説明に感心させられる。
読み進めていくと明と暗が重層しながら、次から次へと新しい展開が現れ、本を置くタイミングを測り難くなった。 
こんな人にオススメ
- 真山仁「ハゲタカ」シリーズファン
 - 金融、投資、企業買収のスリルや裏側に興味あり
 - リーマンショックや金融危機に関心があり
 - 資本主義の問題を抉る社会派小説を読みたい
 
 
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