もし、あなたの祖父母が「老衰」で亡くなったのではなく、「治療可能な病気」を放置されて亡くなったのだとしたら?
私たちは「人は老いて死ぬのが自然の摂理」と受け入れてきた。この『常識の中の常識』を真っ向から否定する衝撃の書。
「老化は治療できる病気だ」
この本は、単なる健康法を説いた本ではない。これは生物の死という宿命に対する、科学の宣戦布告だ。あなたの「年齢」に対する概念が音を立てて崩れ去る。
あらすじ
DNAを使いこなす「エピゲノム」
生物の設計図はすべてDNAに書いてある・・・もう誰もが知っている常識である。
では、DNAに書いてあるデータから、必要な場所を探して読み取り、体内の化学反応につなげる仕組みは?その仕組みはどうやって次世代の細胞や生命に伝わるか?
この仕組みや関連する物質を「エピゲノム」という。
筆者は、酵母やマウスの実験を長年続け、損傷したDNAの修復が多発するとエピゲノムが劣化し、老化につながることを実証してきた。長寿遺伝子が劣化を食い止めることも分かってきた。マウスの老化を遅らせ、寿命を伸ばす実験も既に行われている。
老化の研究は、もうここまで進んでいる。
老化防止の秘策、そして老化防止薬の開発
これまでの研究を踏まえ、老化防止に役立つ方法を挙げている。このような習慣が長寿遺伝子を活性化させ、老化防止につながるという。
- 食べる量を減らす、特に肉や乳製品の摂取を減らす
- たまに食事を抜き、一定の時間だけ体を飢えさせる (ファスティングの起源はこれ?)
- 運動習慣。特にHIIT(高強度インターバルトレーニング)
- 寒さに身をさらす
ただし、タバコや有害な化学物質・放射線は、遺伝子に修復しきれないダメージを与えるのでダメ。
さらに、サーチュイン遺伝子を活性化させる物質も分かってきた。そのうちの一つNMNはサプリメントとして発売されている。
筆者は満を持して説く。「老化は治療可能な疾患だ」と。
人類は老化を止められるのか?
急速に進む老化防止に社会は追いつけるのか?人類はイノベーションを活かせるのか?筆者の考察は進む。
人口、高齢者の社会参加、保険制度、死の迎え方、そして長寿研究に社会のリソースを振り向けること。将来の人類にとって大切なことと説いて終わる。
感想
若返りの鍵は体へのちょっとしたストレスだった
ある程度年齢が進むと、病院で「この程度なら加齢現象です」と言われるようになる。対症療法の薬はもらうのだが、薬が切れるとまた、の繰り返し。
こうした経験から、老化だから仕方がない、とあきらめている私たちにとって、それを覆す科学の成果に、好奇心と少しの期待を持てるはずだ。
老化を防ぐ日常習慣の多くは、昔から言われてきたこと。朝食を抜くなら、明日からでもできそうな気がする。続けられるかは別の話だが。
ちなみに、老化防止に役立つと言われるNMNは、売れ行きが伸びているようだ。
老いなき社会はディストピアか?文系の研究者も目を向けよ
さて、最後の提言は、それほど深みがあるわけではない。老化研究に国家予算をつけろと言うに至っては、さてはこの本はロビー活動の一環だな、と思ってしまう。
しかし、社会変革まで医学研究者である筆者に期待し続けるのは酷だ。
「長寿科学」を医学・生物学の一分野から、人類の総合的な知の体系に昇華させるために、さまざまな分野での研究が必要になるはずだ。
これがバイオテクノロジーの最前線だ
若返りの方法ばかりが注目されがちだが、老化の原因を追求する数々の研究手法もわかりやすく書かれており、CAS9による遺伝子編集など、バイオテクノロジーや医学に興味がある読者にとっては、ワクワクするはず。
こういう人にオススメ
- 健康診断の数値が気になり始め「アンチエイジング」という言葉に敏感だ
- 今すぐにでも実践できる若返りの秘策、それも科学的なエビデンスに基づいた知識が欲しい
- 医学やバイオテクノロジーを志す学生、あるいはそういった話題に興味がある
- 人生100年時代はユートピアかディストピアか?社会の変化を考える手がかりが欲しい

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