警視庁警察学校で、同期同教場に偶然集まった4人組がやがて幹部となり、反社・外国勢力・政治家の組織犯罪と対決するシリーズ第8作。
今回は、前々作で岡広組のヒットマンに襲撃された龍が復帰する。
あらすじ
サミット警備の目の前で殺人事件
伊勢志摩サミット開幕を目前に控えた2016年6月。英虞湾を航行していたクルーザで殺人事件が起きる。
真珠養殖の筏を誤って早く引き上げてしまった養殖業者の若者が、ビニールシートにくるまれた不審物を発見する。折しもサミットの海上警備に応援派遣されていた警視庁機動隊が引き上げて内容を確認すると、穴子とシャコにまみれた遺体だった。
水上警察署から派遣されていた班長が、関西系暴力団の遺棄の手口であることを指摘。厳重な水上警備の目の前で起きた殺人事件に、三重県警が大騒ぎになる。班長は、ドン引きする同僚を尻目に、穴子とシャコを嬉々としてバケツに集めていた…。
行き詰まる捜査…そして青山登場
被害者の身元と岡広組お抱えプロダクションのアルファスターとの関係はわかったが、それ以外の手がかりはまったく得られず、三重県警の捜査はすぐに行き詰まる。
万策尽き、捜査第一課長は、警察庁派遣経験があり藤中の伝手がある課の上席に、警視庁公安部への内々の相談を指示する。
青山と龍の捜査がつながる、そして過去の事件が…
青山たち公安部が公安情報を駆使して捜査すると、事件の背後関係が次々と明らかになる。その中には、過去の事件との関係が度々浮かぶ未解決事件、下北沢の劇団で起きたトリカブト殺人事件、さらに公安部内の濱忠派閥との関係もあった。
さらに、被害者が直近で手掛けていた「仕事」…水浄化装置を巡る企業恐喝と補助金詐取が、龍が追っていた土壌改良を巡る農水省・JICAの汚職とつながる。
感想
じっくり捜査・蘊蓄多めの巻
今回は、「濁流資金」の回ように次から次へと事件が起こるジェットコースター的展開ではなく、クルーズ船内殺人の捜査が中心に進む。
その代わり、日本、特に中国・韓国に近い福岡を中心とする当時の外国人情勢、ロシアと中国のマフィア、パナマ文書に関する蘊蓄が多めで、それが事件の鍵となってくる。
目まぐるしさを感じずに読める回である。
鮮やかな家宅捜索
今回、取り調べのシーンはあまりないが、汚職事件の家宅捜索は見せ場だろう。
事前に綿密に段取り、複数箇所の一斉立ち入りから証拠品の押収・逮捕まで、一分の隙もなく流れるように進む家宅捜索の様子には、感心させられると同時に意外と爽快感がある。
極左のモデル
下北沢の劇団を乗っ取り、前作で「3兆円企業」と言われた「革共連構造派」は、おそらく革マルがモデルであろう。本作でも「あの巨大労組を牛耳った」とあり、巨大労組とはJR総連と思われる。
そして、革共連構造派と数十年にわたり内ゲバをしていた「革命的共産主義者労働委員会」のモデルは中核派であろう。

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