警視庁の「同期カルテット」として誉高い中級幹部の4人が、暴力団や、中国マフィア、そして政治家の汚職と対決する。シリーズ第7作。
しかし、前作の「巨悪利権」で龍が刺されたため今回は実質3名である。
あらすじ
大分特急車内でのフグ毒殺人再来
大分県内を走っていたJR九州の特急車内で、2人組のカップルのうち女性がトイレで倒れる。
女性が非常ボタンを押し、駆けつけた車掌が車内の医師を探して応急処置をするも、女性は死亡。
症状と解剖所見から、テトロドトキシン中毒が死因と判明する。監察医は、医師が応急処置をしたにも関わらず気道が確保されていないことに不審を抱く。
死亡した女性は、東京・西新宿の高級マンションの住人であり、巡回連絡カードから、なんと引退した伝説の経済ヤクザ清水保の義妹だったことがわかる。
野に放たれていた袁偉仁
公安部に一報が入り、「大分の特急でテトロドトキシンによる殺人」という前作との共通点にひっかかりを覚えた青山が連れの男を照会すると、京都大学卒の元岡広組舎弟頭だった。
折しも岡広組分裂の噂が流れ、逮捕した袁偉仁は起訴に持ち込めず釈放した後だったことが、余計にきな臭さを増す。
ついに岡広組分裂、そして抗争、青山も…
そんな中、岡広組分裂の噂が現実となる。
青山も精鋭20名とコンピューター付きトレーラーととともに福岡入りする。たまたま居合わせたシアターで発砲事件が起きるが、青山部隊がわずか45分で検挙するという大手柄を上げるる。しかし、これが岡広組に火をつけ、また福岡県警からの情報漏洩もあり、新たなヒットマンを呼び寄せてしまう。
ヒットマンも片付け、藤中と博多の屋台で杯を傾けていた最中、ついに青山が襲われる。
感想
ITの活躍(?)
今回は、特にコンピュータを駆使した捜査が大きな役割を果たす。ビッグデータを一瞬で解析・携帯電波による人間探知・暴力団データセンターへのハッキングなどで、暴力団との情報戦に勝ち抜いていく。
これほど情報戦の武器を携えているのならトクリュウにも苦労はしないはずだ(これは本作と警察への二重の嫌味)。
京大→極左→暴力団という黒きエリート
このところ良く出てくるのが京都大学卒の元暴力団である。これまで伝統工芸の世界に転じた者、経済ヤクザの道を進む者と、いろいろなキャラクターが出てきたが、今回は犯人で極左から転向した変わり種である。
犯人は完落ちして、極左から暴力団に転向した理論という名の屁理屈を語る。
この知能と暴力が同居する狂気は、現代の知識人や自称インフルエンサーにも通ずる。
チャイニーズマフィアの首魁に強制捜査!次作の展開は?
最後に、公安部のハッキングで謎ががつながり、チャイニーズマフィアの首魁である袁に再び強制捜査が入る。
しかし、ハッキングにより、福岡県警の情報漏洩の謎が一層深まる。また、公安部の「濱忠一派」については、劇団殺人事件の捜査データ改ざんを青山が突き止めたものの、有耶無耶なまま終わる。濱忠には実在のモデルがあるだけに、これで終わりとは考えにくい。次作の伏線になるはずである。
濱中と劇団殺人事件が、神宮寺・袁が塀の向こうに沈んだ後の新たなヒールになるのだろうか。
こんな人にオススメ
- 警察小説、特に濱嘉之『警視庁公安部・青山望』や『警視庁情報官』シリーズのファン
- 警察、公安、暴力団、さらには国際的な諜報戦など、社会の裏側に興味あり
- リアルで骨太な警察小説、社会派ミステリーが好き

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