マンハッタン計画(アメリカの原爆開発プロジェクト)の参加者にはソ連に寝返り情報を漏洩した者がいて、ソ連はその情報をもとに短期間で原爆開発に成功した、という歴史は以前からよく知られている。
その真実と詳細を、当時のソ連の暗号通信を克明に記した内部文書から解き明かした問題の書である。
あらすじ
アメリカは、アメリカ国内のソ連のエージェントから本国への無線通信を傍受し、一部の暗号解読に成功していた。これがヴェノナ作戦で、マンハッタン計画以外にも、多数のアメリカ人がソ連の協力者になり情報を漏洩していたことが判明した。
ヴェノナ作戦の成果はソ連崩壊後の1995年まで秘匿されていたが、資料が公開されてからは急速に研究された。
本書では、判明しているアメリカ側のソ連協力者の実名を明示しつつ、当時のソ連のスパイ活動の実態を明るみにしている。
ソ連は第二次世界大戦以前からアメリカ国内にスパイネットワークを構築し、政府内部からマスコミや産業界まで、多数のアメリカ人を協力者としていた。その主要な舞台はアメリカ共産党(この政党は今でもあるそうだ)だったという。
感想
ソ連崩壊後に公開された膨大な公文書を読み解き、アメリカに潜んでいたスパイの実名が明らかになる…。アメリカ国内のスパイ活動は赤狩りのでっち上げという説も有力だったが、ヴェノナ文書は、それが事実であることを証明した。
ヒロシマ以降、なぜソ連が原爆をあれほど早く開発できたのか、その答えはこれだ。
教科書には載らない水面下での情報戦が、歴史をいかに左右するかを教えてくれる。
さて、ヴェノナ文書に記録されているソ連のスパイたちは、一見ごく普通の公務員や科学者、ジャーナリスト。彼らはイデオロギーへの共感、時には金のために、いとも簡単にスパイになっていった。
おそらく、21世紀の現代でもそんな構造は同じなのだろう。
膨大な人と金をつぎ込んでスパイネットワークを構築したソ連と、暗号を解読するまでノーガードで殴られっ放しだったアメリカ双方に呆れるやら恐ろしいやら。
こんな人にオススメ
- インテリジェンスやスパイの世界に興味あり
 - 第二次世界大戦後や、冷戦時代の歴史に関心あり
 - 実際にあった事件や、陰謀論の真相を追うのが好き
 
 
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