警視庁公安部の青山望たち警察学校の同期カルテットが、政財界・暴力団・外国の闇に斬り込むシリーズ第2作。
あらすじ
参院選から始まる怪事件
都内に複数の病院・介護施設を擁する有数の医療法人の理事長が、日本公正党の重鎮で厚生族の大澤純一郎(小沢一郎と小泉純一郎を足して2で割ったようなキャラクターか?)の引きで参院選比例区に出馬するところから事件が始まる。
市議に裏金をばら撒き、怪しげな選挙コンサルタントに大枚をはたいたものの惜しくも次点。政治活動から足を洗って病院経営に戻ろうとした矢先、当選した議員がひき逃げで死亡して繰上当選。同時に裏金を渡した議員もひき逃げで死亡し、選挙参謀だった事務長が消えた…。
事件の影の向こうに見えたモノとは?
今回も、病院経営に乗り出し数々の悪事を企み、産廃処理業に乗り出し犯罪の証拠隠滅に利用する暴力団、スパイ機能を仕込んだルーターを日本で売りさばき、同じ手口で防衛機器を外国に売る中国、それを操る政治家の素顔、それぞれを追う4人の捜査が一点に収斂する。その様は青山の以下のセリフに凝縮されている。
日本社会の裏構造というかな、そこにメスを入れようとすると、政財界の暗い部分がどうしても照らし出されてしまう。
感想
医療と選挙を舞台におきる、一見関係のなさそうな複数の事件が、暴力団・政治家・医者・中国という悪のカルテットを介して底でつながり、大型事件に発展する。
このシリーズお決まりのパターンだが、一つ一つが本当にありそうな話で底知れぬ不気味さを感じる。
東京警察病院の知られざる役割
犯人を匿う病院に向かう刑事に東京警察病院の医師が同行し、病院の医師と面接して犯人を警察病院に転院させ、身柄確保に協力するという小ネタも興味深い。
東京警察病院は、中野駅近くの都市公園の一角にある総合病院。かつて陸軍中野学校や、警視庁警察学校があった場所である。
警視庁関係者を優先的に診療する一方、一般患者の外来・入院・手術・救急を普通に受け入れている。
他の病院と大きく違うのは、捜査協力という特別なミッションにある。
1995年に警視庁がオウム真理教の上九一色村の施設を強制捜査したとき、ここの医師が同行している。また、覚せい剤で逮捕された清原和博も逮捕直後一旦ここに収容された。
こんな人におすすめ
- 濱嘉之『警視庁公安部・青山望』や『警視庁情報官』シリーズを読んできた
- 政治や医療の裏側を描く社会派ミステリーが好き
- 警察のリアルな捜査手法や組織の動きに興味あり
- 中国や国際的な裏社会が絡むスケールの大きな物語を読みたい
過去作品の登場人物や事件が絡むため、シリーズを最初から読んでいる方がより深く楽しめる構成になっている。「警視庁公安部・青山望」シリーズを初めて読む人には、「警視庁公安部・青山望 完全黙秘」がオススメ。

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