JALの社員から小説家に転じた深田祐介が亡くなって10年以上経った。『炎熱商人』は、彼が直木賞を受賞した出世作である。日本の高度経済成長期に、マニラを舞台にした骨太な商社小説。
物語に登場する人物の描写、日本の商社マンたちとフィリピン社会の協力と確執、そして互いの深い溝の原点となった戦争体験がリアルに描かれ、心に強く残る。
あらすじ
高度成長期の日本商社の活躍
高度成長期の日本で木材需要が急増し、中堅商社がフィリピン、ルソン島のラワン材の新規取引に走る。
人格者の支店長、変わり者の次長、ぼんぼんの出向社員、いなせな(要はイケメン)現地社員、そして現地の人々が、心に残る戦争の傷、商習慣の違い、本社と現地支社との板挟みに翻弄されながらも、徐々にフィリピン社会に根付いて事業を花開かせていく。
アジア・太平洋戦争の傷跡
イケメン現地社員は日比混血で占領下のマニラで日本人学校に通っていた設定。随所に戦時中の回想が織り交ぜられ、そしてなぜ彼が日本の商社で働く道を選んだのかが語られる。
彼にとって戦争の記憶は、光と影と残してきた思い出、と言えるだろう。
最後に襲う悲劇
そんな中、世界経済は不況に陥っていく。彼らも世界経済の荒波には抗しきれず、フィリピン社会と深刻なトラブルが発生する。そして、商社マンたちを悲劇的な結末が襲う。
感想
全員のドラマに目が離せない
はるか昔にNHKでドラマ化された。その衝撃のラストシーン(それはドラマの冒頭にも使われている)がかすかに記憶に残っている。
まず、日本商社が小さな取引を積み上げてフィリピン社会の信用を作っていく様子。商社マンたちの真摯な姿勢が浮かび上がり、感情移入してしまう。
また、現地社員の戦時中の回想。日本軍将校や日本人少女との出会いと置き忘れた思い出…。その展開も最後まで目が離せない。
就活都市伝説は本当か?
かつて、商社の採用面接で「君は炎熱商人を読んだことはあるか?」と聞かれたことがあるという。都市伝説かもしれない。
しかし、この小説を読めばそれは都市伝説ではなく、本当にそんな質問があったのだろうと思わずにはいられなくなる。
こんな人におすすめ
- 商社マンをはじめ、国際的なビジネスに関わっている
 - すべての方高度経済成長期の日本の熱気を体感したい
 - 異文化理解や戦後の歴史に興味がある
 
 
![炎熱商人(上) 【電子書籍】[ 深田祐介 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/rakutenkobo-ebooks/cabinet/0961/2000000220961.jpg?_ex=128x128)
![炎熱商人(下) 【電子書籍】[ 深田祐介 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/rakutenkobo-ebooks/cabinet/1708/2000000211708.jpg?_ex=128x128)


コメント