「警視庁公安部・青山望」は、公安警察のリアルな現場と国際情勢の最前線を描く、濱嘉之の代表的な公安警察小説シリーズです(全12巻)。
テロ対策、外国勢力の工作、金融犯罪、反社会勢力の資金ルートなど、ニュースでは語られない“国家の影”を描き切ったシリーズとして高い評価を受けています。
主人公・青山望は、警視庁公安部で情報収集と分析を担う警察官。
政治・経済・国際情勢が複雑に絡み合う凶悪事件の捜査を通し、「国を守る」とは何かという問いに真正面から向き合い続けます。
シリーズの魅力
公安警察のリアル描写と骨太な社会分析
作者の濱嘉之自身、警視庁公安部の出身。経験に基づく生々しい描写と、圧倒的な情報量が魅力。
ニュースからは見えない水面下での、警察・反社・外国勢力のダイナミズムが圧巻です。
また、作者の公安部での職務の中で触れたと思われる、政財界などの実在の人物のマル秘情報が散りばめられており、登場人物や雑談に出てくる逸話のモデルが何かを想像するという楽しみ方もあります。
同期カルテットの人間ドラマ
青山・藤中・大和田・龍の、警察学校同期・同教場の四人の関係性がシリーズを貫く大きな軸。
彼らが日本への思いを胸に協力する姿は、硬派な作風の中で強い共感を覚えるところです。
一作ごとに完結しつつも全体は大きな長編
起きた事件は、その巻で犯人を検挙する、という流れになっているので、どの巻から読んでもある程度楽しめます。
ですが、一度起きた事件が次巻への伏線になっていたり、カルテットの昇任・主人公青山のプライベートの変化など、一大長編の要素も。初巻の「完全黙秘」から順に読み進めるほど、味わいを感じることができます。
こんな人におすすめ
- 公安小説・警察小説が好き
- 国際情勢・政治・金融犯罪に興味あり
- 硬派で知的なエンターテインメント小説を読みたい
- シリーズものの中でも“成長物語”がある作品を探している
シリーズ全体を読んでの感想
「警視庁公安部・青山望」シリーズは、反社や外国勢力を追う中で、個人の信念、国家の闇、組織の論理、社会的弱者の現実…といった重厚なテーマが常に交錯します。
その中で、所属が異なるカルテットが、それぞれの現場で国と国民を支えようとする姿が胸を打ちます。
シリーズを読み終えたとき、社会の安全を守ることの一つの側面が、はっきりと浮かび上がってくるでしょう。
一方で、青山が時折見せる強烈な上から目線は、批判的に見ざるを得ません。このような思想が公安部に広がっているとすれば、それが大河原化工機事件のようなデッチ上げ事件を起こす根本的な原因なのだと見るべきでしょう。
