警視庁部長だけではなく総監にもその名を知られる警視庁の同期同教場の幹部四人組。
ヤクザ・マフィア・外国勢力・政治家たちが結託し、日本の治安と財産を脅かす裏社会の蠢きと対決するシリーズ第10弾。
あらすじ
祇園祭の山鉾巡行を控えた7月の京都。その裏道で突然発砲事件が起き、4名が死亡するという物騒この上ない事件が発生する。
近くにいたカップルが手回しよく現場をスマホで撮影し、110番通報する。
駆けつけた京都府警にスマホ映像を渡したのは…、なんと警視庁公安部管理官の青山と、新婚の妻だった。
祇園祭の眼の前でアジアンマフィアが抗争
青山の映像などから、被害者は来日してスリを繰り返すコリアンマフィア(韓国系)、加害者は京都に根を張るチャイニーズマフィアと判明。実行犯はすぐに博多から出国してしまう。
従来にマフィアの勢力図からは考えにくい事件の構図に、頭をひねる青山。
しかし、コリアンマフィアが北朝鮮工作員と連携してサイバーテロを行っており、京都大学が被害にあっている事実が判明し、マフィアを取り巻く複雑な事情が見え始める。
怪事件が次々発生
そのころ捜査2課の龍が追っていたのは、地面師による不動産詐欺と、老人ホーム入居を巡る詐欺。北朝鮮工作員の存在を思わせる「背乗り」。ここにもチャイニーズマフィアの影がチラつく。
「聖域侵犯」の頃から青山が追っていたパナマ文書・バハマリークスの調査も佳境を迎える。裏経済に詳しいメディア関係者の協力も得て、文書に登場する日本語名の会社の幹部に、アルファスター関係者がいることが判明する。その人物を追うとまたしても半グレの影がチラつく。
さらに青山と藤中が銀座で別事件の捜査中、またも発砲事件に遭遇。
チャイニーズマフィア2名が死亡するが、青山が公安データベースで検索すると見事にヒット。被害者は国内の反社グループからヘッドハンティングを図るマフィアの幹部だった。
日中韓の反社・半グレが集結
前作で青山が袁偉仁を逮捕した後、従兄弟の袁劉秀が跡を継いだ形になった。袁劉秀は神戸大学出身でハッキングにも詳しい。
青山が最新の半グレやマフィア事情を調査する中で、彼らが芸能界の利権、さらに経済犯罪やハッキング、さらに仮想通貨に手を伸ばしている実態が明らかになる。
そして、清水保と接触する中で、ハッキングをキーとする暴力団とのつながりも浮かび上がる。
事件が次々と起き、暴力団・半グレ・マフィアをつなぐ地下水脈をカルテットが追い詰めたとき、「一網打尽」が始まる。
感想
今回は次々と事件が起き、「濁流資金」並みの忙しい展開になる。青山が作った事件の相関図を本の付録にしてほしいくらいである。
政治に翻弄されるアジアンマフィアの悲哀
神宮寺と袁偉仁が逮捕されてから、シリーズの中心が「本国の政治に翻弄されダイナミックに動くアジアンマフィア」にシフトしてきた。
今回のコリアンvsチャイニーズ抗争の背後関係はまさしくそれであり、袁劉秀も参考人聴取で、習近平の汚職追放キャンペーンに対する複雑な胸中を明かしてしまう。
日本にとっては碌でもないことばかりする敵だが、中国・韓国の高失業率の経済構造の中、一般市民が、マフィアに堕ちなければ生きられない状況には、同情を禁じ得ない。
警察の一歩先を行く半グレ
暴対法や暴排条例で昔ながらの暴力団のシノギが厳しくなる中、少年法の間隙を縫って警察の情報収集の目をかいくぐって「大人の集団」になった半グレの東京狂騒会。
成長の過程でチャイニーズマフィアの龍華会と接点が生まれ、従来の暴力団のシノギの世界に進出し、やがてサイバー空間にも手を伸ばしていく。
しかし、警察は半グレの成長にキャッチアップできず、事件が起きてから摘発する実態が常態化している。もはや、東京狂騒会は「ジャパニーズマフィア」になった感がある。
このシリーズで何度も繰り返されているのはこの構図で、「事件が起きたら敗北」という公安部の目線に照らせば、青山たちは負けに近いと言えなくもない。
とりあえず神宮寺と袁偉仁は塀の中に送ったが、刑期は短いのですぐ出てくる、娑婆には袁劉秀もいる。この後、カルテットの反転攻勢があるのか注目。
モデル考察
今回も実在の人物・事件がイメージされていると思われるものを考察してみた。
こんな人にオススメ
- 濱嘉之『警視庁公安部・青山望』の続きが気になる
- 国際情勢やテロ対策など“リアル寄りの公安もの”が好き
- 警察、暴力団・半グレ、さらには国際マフィアとの戦いなど、社会の裏側に興味あり
- リアルで骨太な警察小説、社会派ミステリーが好き
一話完結ではなく、過去作品の登場人物や事件が次の伏線になることがあるため、シリーズを最初から読んでいる方がより深く楽しめる構成になっている。「警視庁公安部・青山望」シリーズを初めて読む人には、「警視庁公安部・青山望 完全黙秘」がオススメ。

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