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夏目漱石

夏目漱石『硝子戸の中』|「こころ」以後に綴られた静かな人生の記録

夏目漱石

夏目漱石が朝日新聞に連載したエッセイ。

自分を訪ねてきた人々との対話、作家としての日々の活動、幼い頃の思い出などから、 漱石が感じたことを綴る。1話または数話読み切り形式。

あらすじ

当時すでに人気作家だった夏目漱石の家には、さまざまな用事で来客が訪れていた。

雑誌に載せるために顔写真を撮らせろという編集者、自分の身の上話(おそらく男性関係)をして小説に描いてくれという女性、頭の中が片付かないという数学好きの女性(現代では発達障害と診断されるのだろうか)などなど。

このような一風変わった来客と漱石との対話や交流、そして漱石の身に起きたことや感じたことを淡々と綴っている

題材は他にも、ちょっとした嫌がらせに遭った話、飼い犬や飼い猫の話、幼い頃の家族や友人の思い出、死生観を綴った文章もある。

感想

古き良き時代の人気作家との交流

人気作家が日々の暮らしや感想を綴った新聞連載は、現代でいえばブログやYouTubeチャンネルにあたるだろう。当時の人は、講演などで漱石を直接目にする機会がなかった人でも、この連載を通して、漱石をいう存在をより身近に感じたはずである。

また、漱石の家を訪れる人が多様で、軽く相談でもするかのように不特定の人が訪れていることに気付く。「原稿を見てくれ」だの「揮毫してくれ」だのと勝手に物を送りつけてくる人間も多数あり、適当に対応したら軽い嫌がらせを受けたことまで。

メディアは原始的だったが、直接交流するチャンネルが存在しうる、古き良き時代だったのだ。

現代にも通じる漱石の悩み

漱石が他者との関わりについて率直に悩みを吐露する場面がある。

今の私は馬鹿で人に騙されるか、あるいは疑い深くて人を容れることができないか、この両方だけしかないような気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯続くとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう

漱石ほど思い詰めてはいないかもしれないが、この悩みは、現代に生きる私達も皆感じているのではないだろうか。

この他にも、持病について、死についてなど、あちこちに漱石の巡らせた思索が書かれている。これらも、共感を覚える人がきっといることだろう。

こんな人にオススメ

  • 小説以外の作品から深層心理を読み取りたいディープな夏目漱石ファン
  • 夏目漱石の後期作品(『こころ』『道草』など)に関心あり
  • 「晩年の漱石」「作家の人生観」をテーマに読みたい
この記事を書いた人
Windcastor

小説・ビジネス書・エッセイなど幅広く読む読書ブロガー。
「本の扉を開く」では、話題の新刊や名著を中心に、読後に残る気づきや感想をわかりやすくまとめています。
次に読む一冊を探すきっかけになれば幸いです。

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