警視庁の超優秀なノンキャリアの公安マンを主人公に据えた、公安モノの警察小説シリーズの第一弾。
「リアルさ」を売りに、原発利権とそれに群がる政治家・宗教団体などの暗躍、それに対峙する公安警察の活躍を描く。
あらすじ
リアルな犯罪・捜査の描写
秀逸なのは、原発に反対する地主を暴力団を使って追い出すシーン。証拠を残さないために暴力団が選んだアナログかつ極めて現代的な手口が笑える。シノギも命がけである。
しかし、2020年代の今、この手法はむしろ大騒ぎになるため使えないだろう。
また、公安の基本「転び公妨」による被疑者逮捕のシーンもリアルである。
公安警察とは何か?
作者 濱嘉之のキャリア
濱嘉之の経歴を見ると、警視庁の公安マンとして活躍したことが伺える。
その頃の実体験や見聞を投影させているのだろう。登場する団体や人物には大抵実在のモデルがある。
さすがに、警視庁総務部に情報室という秘匿セクションを作った設定はフィクションだと思うが…。
公安警察とは?
公安というと左翼を監視するイメージが強いが、現実はそれだけではない。
日頃から社会に多くの協力者を作りつつ、一旦背後関係が複雑な事件の端緒をつかめば、協力者を使って陰に陽に捜査を指揮し、政官財、宗教、反社、外国勢力にかかわらず犯罪者を一網打尽にすることがのミッションであることがわかる。
感想
そんな公安事件を扱う小説だけに、登場人物・団体、背後関係の説明に多くの紙数が割かれる。ラストでも事件の全容が解明するわけではなく、まだ謎は残る。ゆえに、カタルシスはあまり得られない。
利権が絡む事件の場合、多くの情報の中から立件され、報道されるものは一部に過ぎないだろうから、これが公安事件の捜査の現実なのだろう。殺人事件のトリックを解き明かす推理小説のようには行くまい。
そして実は、示されている膨大な情報に、次作以降の伏線も含まれている。
この巻は、シリーズの導入編として、公安警察を知る資料として、そして実在のモデルを想像しながら読むのが面白いだろう。
こんな人におすすめ
- 警察小説の中でも、特に「公安」や「インテリジェンス」の世界に興味がある
 - 元警察官が書いた、リアリティのある物語を読みたい
 - すっきり解決しない物語に、逆にリアリティを感じる
 - 小説の登場人物・団体の実在のモデルが気になる
 
 
![警視庁情報官 シークレット・オフィサー (講談社文庫) [ 濱 嘉之 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/8078/9784062768078.jpg?_ex=128x128)


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