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ハゲタカ真山仁

【書評】経済小説の金字塔、真山仁『ハゲタカ』|鷲津は果たして悪魔か救世主か

真山仁 ハゲタカ

ハゲタカ→ハゲタカ2→レッドゾーン→グリード… と長きにわたり続く、真山仁のハゲタカシリーズの第1弾。 NHKでドラマ化もされている。

あらすじ

2000年頃、平成不況にあえいでいた日本で、不良債権や経営が傾いた会社を安く買って短期間でボロ儲けする外資系投資銀行は、死肉をむさぼるハゲタカと言われていた。
そのハゲタカファンドの一つを率いる日本人鷲津政彦を軸に、さまざまな企業の再生に携わる人々を描いている。

世論誘導のためマスコミへのリーク合戦も辞さないような、企業買収ビジネスの熾烈な舞台裏が語られつつも、決して感情的なハゲタカ悪玉論には与していない。金の亡者みたいな投資銀行の人物も出てくるのだが。

感想

鷲津のビジネスの場における冷徹さと個人としての心の揺れ動き、それぞれの立場で企業再生に精魂を傾ける人々、そして彼らによって企業が苦境に立ち至った真の原因が白日の下にさらされる様子が面白い。

こうした鷲津をただのハゲタカとして片付けることはできないだろう。
鷲津には日本経済への強い問題意識と、ビジネスパーソンとしての独特の矜持があるからだ。
同時に、そうした本音を決して表に出さないがゆえの強烈な孤独と、孤独を当然のこととして受け入れる強靭な個性も。

彼の「攻撃」は古いシステムへの復讐であり、かつ計算された「日本は変わらなければならない」という強烈なメッセージだ。

出てくる企業の名前や設定から、実在のモデルがあるように思われる(三葉銀行→三和銀行など)。

こんな人にオススメ

  • 『半沢直樹』シリーズのような、スリリングな経済・企業小説が好き
  • バブル経済やその後の「失われた時代」に関心あり
  • M&Aや投資銀行の世界に興味があるビジネスパーソンや学生
この記事を書いた人
Windcastor

小説・ビジネス書・エッセイなど幅広く読む読書ブロガー。
「本の扉を開く」では、話題の新刊や名著を中心に、読後に残る気づきや感想をわかりやすくまとめています。
次に読む一冊を探すきっかけになれば幸いです。

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