「日本を買収する」と豪語する鷲津政彦が日本の巨大企業の買収合戦に挑むハゲタカシリーズの第2作。今回も、日本に実在した巨大企業のM&A案件がモチーフとなっている。
あらすじ
上巻では、経営不振に喘ぐ名門企業鈴紡の再建を巡り、ライバル企業の月華が化粧品事業の買収を目論む。鈴紡内部が分裂し、そこにメインバンクのUTB銀行や鷲津たちが背後に加わり買収合戦が始まる。
下巻では、不振の家電メーカー曙電気を巡り、「コピー屋」からのステータスアップをも目論んでアメリカの軍需産業と組み買収に動くシャインが、曙電気に転じ自主再建を果たそうとする芝野と激突する。そこで鷲津がどう動くか、そしてその根底にある思いを見ておきたい。一方で、物語が投資銀行の範疇を超えて広がり、ウソっぽさが出てきてしまうのだが。
社名から、どの企業をモデルにしたか、だいたい分かる。鈴紡はカネボウ、月華は花王、曙電気は日立、シャインはキヤノンであろう。
何社かが外資の手に落ちた現在の家電業界の勢力図からは想像できないが、かつては日立が長らく不振にあえいでいた時期があった。
感想
本作の縦糸は巨大M&Aビジネスの熾烈な現場と鷲津や芝野たちの勝負だが、以下の数々の横糸が過度に複雑にならない程度に絡まり、物語の面白さを深めている。横糸は次作への伏線でもあり、本作も第1作と同様、To be continuedで終わる。
- 日光の名門ミカドホテルの再建と若き女性社長貴子の成長
 - 金と少数精鋭の仲間で仕事するやり方から、政府・マスコミを掌で動かすことを覚える鷲津のスタイルの変化。
 - かつての部下アランの横死を巡り鷲津が受けた衝撃と再生、そして謎
 - 芝野の家庭崩壊の危機と再生 等
 
ハゲタカの鷲津とバンカーの芝野が、外から大鉈を振るう鷲津と、中で汗を流す芝野として、立場を変えて再会する。二人は、いわば経営者の持つべき「冷徹な合理性」と「助け合う人間たち」を体現しているかのようだ。
経営にとっては両方必要で、バランスに神髄が宿るのだといえる。
鷲津も芝野も、バランスを内に秘め、時に悩む姿を見せる。
自分自身の仕事や属する組織のあり方を、改めて考えずにはいられないだろう。
こんな人にオススメ
- 『ハゲタカ』シリーズを通して、鷲津政彦というキャラクターに魅了された
 - 企業のマネジメントや組織改革に関わるビジネスパーソン
 - 日本の「ものづくり」の未来や、伝統と革新のジレンマに興味があり
 
 
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