2025/06/06

濱嘉之『警視庁情報官 サイバージハード』が描く警察ホワイトハッカーたちの秘密捜査

はじめに

秋葉原を管轄する警視庁万世橋署署長に栄転した黒田警視が、管内で発生した不正出金事件を端緒に宗教団体の大掛かりなサイバーテロを暴く。

あらすじ

万世橋署管内の四井銀行ATMからの不正出金の一報を受け、黒田署長以下警視庁の捜査チームが四井銀行のコンピュータセンターを調査したところ、不正侵入の形跡が発見される。

さらに、国会関係の口座を一手に引き受ける別のメガバンクでも不正出金が発覚し、被害口座は四谷教団配下の政党であったことも判明。

黒田署長が警察トップの特命を受けて臨時捜査チームのヘッドとなり(この経緯にはあまり現実味を感じないが)、日本の警察の威信をかけた捜査が始まる。

感想

知られざるバチカンのインテリジェンス能力

このシリーズでは毎回国内宗教団体の裏事情が語られるが、今回はバチカンを含むキリスト教の世界の情報が濃厚に語られており非常に興味深い。
先頃亡くなったローマ法王フランシスコがアメリカとキューバの国交回復交渉開始に影響力を行使していたことも然りだが、バチカン自体が一つの情報機関であることがわかる。

サイバー捜査の新星登場

万世橋署のパソコン野郎落合一真巡査をはじめとする警察ハッキングチームが、合法・非合法の手法を駆使して犯人に迫るシーンも見もの。一真くんのビミョーな恋とその意外な結末もお楽しみ。純粋で有能な一真くん、将来ハニートラップの毒牙にかからないことを祈る。

最後に犯人の動機と意外な狙いが明らかになるが、そこに狂信と好奇心の暴走の恐ろしさを感じた。

こんな人におすすめ

本作は派手なアクションや謎解きよりも、地道な情報収集や分析が中心。華やかさより、リアルな公安活動の息遣いを感じたい人、「警察のヒーローがかっこよく事件を解決する」という小説に飽きた人には最適。

こんな方に特に勧めたい。
  • 警察小説の中でも、特に「公安」や「インテリジェンス」の世界に興味がある

  • 元警察官が書いた、リアリティのある物語を読みたい

  • すっきり解決しない物語に、逆にリアリティを感じる

  • 小説の登場人物・団体の実在のモデルが気になる

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