2025/01/02

濱嘉之『警視庁情報官 トリックスター』|詐欺集団と裏社会の繋がりを暴く警察小説

はじめに

詐欺集団に「黒ちゃん」こと黒木警視以下警視庁総務部情報室が挑むシリーズ第3弾。

あらすじ

今回も、公安マンたちの地道な情報収集と分析によって膨大な情報が見事につながり、政治家あり、宗教団体あり、暴力団あり、新興企業ありの、日本社会の暗部が絡まり合って甘い汁を吸う構図が浮かび上がってくる。

しかし、詐欺集団を追っているうちに、先鋭的な宗教団体のとんでもない計画が明らかに。そこで黒ちゃんが謀る一網打尽の検挙計画が笑える。「事件が起きた時点で敗北」の公安らしからぬ手法であり、現実には警察トップが許すとは思えないが。

感想

シリーズの魅力健在

宗教団体の内部事情、団体間の対立関係と暴力団の関係など、情報は今回も超一級の面白さである。
巧妙化する詐欺の手口、新興宗教が信者の心を掴むメカニズム、そしてそれらが政治や裏社会とどう結びついていくか。非常に具体的で実話にしか見えなくなってくる。

また、黒ちゃんが一斉検挙計画で見せた常識にとらわれない柔軟な発想と人間臭さ。これが、単なる警察の歯車ではない、一人の人間の魅力を際立たせている。

実在のモデルは誰?

なお、このシリーズに出てくる人物や団体のほとんどに現実のモデルがあるのだが(今回は森喜朗・田母神俊雄・もはやレギュラーの統一教会と創価学会・アパホテルあたりか)、「研鑽教会」だけはモデルがわからない。わかる人がいたらコメントで教えてください。

こんな人におすすめ

派手なアクションや犯人との直接対決よりも、地道な情報収集と分析から巨大な悪の構造を解き明かしていく過程にカタルシスを感じるならとても楽しめるはず。
こんな方に勧めたい。
  • 「公安」や「インテリジェンス」の世界が好き
  • 詐欺や宗教といった現代社会の闇に興味がある
  • 派手さよりも、リアルな情報のやり取りに面白さを感じる
  • 小説の登場人物・団体の実在のモデルが気になる
シリーズのどの作品から読んでも楽しめるが、現代的な犯罪に興味があるなら、この「トリックスター」から始めてもよいだろう。

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